
ポーランドのクリスマス |
ポーランドのクリスマスエリ子・イズデプスカ、アルカディウシ・イズデプスキ ポーランドは、ヨーロッパのほぼ中央に位置し、北はバルト海、東はロシア(カリーニングラード州)とリトアニアとベラルーシ、西はドイツ、南はチェコとスロバキアに接しています。緯度が高いため夏の日は長く、夜9時をまわっても外はまだ明るく、人々は遅くまで戸外で夏の宵を楽しみます。けれども、夏が過ぎると秋は急速に深まってゆき、冬を迎える頃には、夕方4時には日はとっぷりと暮れてしまいます。真冬になると、気温が氷点下になることも珍しくはありません。そういうなかで、人々はいかにインドアライフを楽しむかに知恵をしぼってきたといえます。演劇、映画、音楽などの芸術が広く人々の生活に浸透し根づいているのもうなずけます。 しかし国民の90パーセント以上がカトリック教徒であるこの国の最大イベントは、何といってもクリスマスです。イエス・キリストの降誕を祝うこの祭りを、ポーランドの人々は、厳かな中にも心から敬愛をもって迎えます。 師走の慌しさは洋の東西を問わず同じですが、12月に入ると、一家の台所をあずかるポーランドの主婦たちも、クリスマスの準備で忙しくなります。家中の大掃除にはじまり、食料品の買いだし、料理の下準備、カード書きetc.クリスマス料理は、どこの家でも腕によりをかけてつくります。普段から手作りを尊ぶお国柄ですが、クリスマスには、それにますます輪がかかります。ですから、その準備も大変です。 もちろん、忙しいのは主婦だけではありません。プレゼントの用意もさることながら、街のあちこちでツリー用のもみの木が売られはじめると、形のいい美しい木を選りすぐって買って帰るのは、男の役目です。なぜって、だいたいの家は、天井までとどく大きなもみの木をもとめるからです。ツリーの飾りを揃え、子供たちも一緒になって、立派なツリーができあがれば、クリスマスはもうすぐです。本物の木の香りが暖かい部屋に香るのは、ほんとうにすてきです。 そして子供たちの何よりの楽しみは、サンタさんが届けてくれるプレゼントです(ちなみにポーランドでは、サンタクロースのことをミコワイと言い、12月6日はミコワイの日で、クリスマス・イヴにさきがけ、子供たちはくつ下の中にサンタさんからの小さなプレゼントをみつけます!)。 さて、いよいよ24日のクリスマス・イヴです。その前からあわただしかった台所も、今日はそのクライマックスです。皆、何がしかの仕事に追われ落ち着きません。また、この日は一日中誰も肉類を口にしません。熱心な信者になると水かお茶以外は何もとりません。そして最後の準備に追われながらも、その合間を縫って、教会ヘミサに行きます。そして一番星のでる時刻、夕方6時にイヴの日の夕食が始まります。肉料理はなく、鯉を中心として最低12種類の手作りのごちそうが並びます。例えば、鯉のゼリー寄せ、鯉のフライ、鯉のギリシャ風サラダ、にしんの香味オイル浸け、他にきのこのスープ、赤かぶのスープ、塩浸けキャベツときのこのぎょうざ、白いんげんの煮まめ、くるみ、干し果物、それを煮て作ったジュース、そして、この日になくてはならない、けしの実のケーキ、チーズケーキ、チョコレートケーキ等が代表的なものです。日頃は離れて暮らしている家族も、クリスマスには一堂に会します。 皆がそろいツリーの明かりがともると、夕食がはじまります。まず、白い薄いウェハースのような聖食はじまります。まず、白い薄いウェハースのような聖食が皆に配られ、お互い相手のを少し取っては口にし、互いの健康や幸せ、成功などを祈ります。美しくセッティングされたテーブルをよくみると、必ず、人数分よリ一組余計に皿が用意されています。これは、誰が不意に訪ねて来ても、例えそれが見しらぬ人であっても、温かく迎え入れ、ともにこのタベを過ごすためです。クリスマス料理は、家族にとってなつかしいおふくろの昧。これだけの料理を準備するのは大仕事ですが、皆の喜ぶ顔に、作り手の苦労は報われます。 さて、食事の後は、子供達が待ちに待ったプレゼントが配られます。ツリーの下には、いまや所狭しと積み上げられたサンタクロースからのプレゼントが、次々と渡されていきます。子供たちの笑顔はほんとうに愛らしく、家族は共に集い、暖かく和やかに、イヴの夜は更けてゆきます。 この静かな夜に歌われるのが、クリスマス・キャロルです。ポーランドには、ほんとうにたくさんの美しいクリスマス・キャロルがありますが、残念なことに日本では殆ど知られていません。それらは、まるで珠玉の宝石がぎっしり入った宝石箱のようです。ある曲は心にしみわたるように歌われ、またある曲は生き生きと、あふれ出る喜びをつたえます。どの作品も文学的にも音楽的にも非常に洗練されており、シンプルな中にも美しさと輝きを備えています。物心ついた頃から歌い親しんできたクリスマス・キャロルは、ポーランドの人々にとって信仰の枠をこえて、強い愛着のある歌だと言えます。 なかでも最もよく歌われるのが、“マリア様の子守歌”(グディ・シリチナ・パンナ)と“眠れ、幼きイエス”(ルライジェ・イエズゥニュ)です。この2曲は子守歌になっており、クリスマスに限らず、よく口ずさまれます。美しく澄んだ単施律の響きと、幼いイエス様をいおとしむマリア様の姿が、自分を寝かしつけてくれた母親の姿に重なって、ポーランドの人々の心のふるさとになっているといえるかもしれません。 これらのクリスマス・キャロルは、もちろん教会でもうたわれます。25日午前0時、教会ではキリスト降誕を祝うミサが行われます。人々は、星に導かれた羊飼いのように教会へ集まり、ここでクリスマス・キャロルは、厳かに、また高らかに歌われます。 明けて25日26日は、朝から肉料理が堂々と並び、ウォッカも開けられ、食卓は、また一段とにぎやかになります。親戚や友人知人を訪ねあい、旧交を温めます。真冬の、外は粉雪が降り積もり、太陽がめったに顔を見せない、夜の長い12月。しかし、窓の向こうでは暖かい部屋にツリーの灯がまたたき、人々の笑顔が映え、美しい歌声が聞こえてきます。それはまるで、おとぎばなしを絵にかいたような情景です。 ポーランドは、歴史的に他国による侵略や分割、戦争などの犠牲になることが非常に多い国でした。決して、幸せなクリスマスばかりではなかったことでしょう。クリスマス・キヤロルもいろいろな思いの中で次の世代へと歌いつがれていったことでしょう。けれどもクリスマス・キャロルは、愛と平和の中で歌われ親しまれてこそ、ふさわしい音楽です。 時は過ぎ、時代はいよいよ21世妃へとその舞台を移していこうとしています。新しい、模索と再生をかけた改革にいどむポーランドの人々に、より幸多きクリスマスがめぐってくることを、今心から祈っています。 (初出)日ポ協会関西センター(藤井朋子・八木めぐみ・吉岡則子)編『ポーランド料理』日ポ協会関西センター、2000年、pp40-42。 (エリ子・イズデプスキ、アルカディウシ・イズデプスキ) |
ポーランドへの航空便等によるクリスマス・メールの差出し航空便によるクリスマス・メールをクリスマス(12月25日)までに配達されるよう差し出すには、ポーランドの場合は12月17日が最終締め切りである。小包は12月12日が最終締め切りである(この締め切り日は東京国際郵便局を基準に設定しているので、他の郵便局から差し出す場合は2〜3日早めに出すこと)。 クリスマス・カード、ニュー・イヤー・カードを航空便で差し出される場合には、郵便物の表面に「X’mas Card」「New Year’s Card」などの文字を記載することにより、25グラムまでは密封して、「グリーティングカード」料金で出せる。料金は110円。 ![]() (文法解説) 動詞「przesyla」(男性も女性も同じ)は対格をとるが、動詞「zyczy」は生格をとる。したがって、「zyczy」の場合「Wesolych Swiat」、「szczesliwego Nowego Roku」と本文が生格になるわけである。差出人が夫婦、家族の場合はそれそれそれぞれ「przesylaja」、「zycza」と動詞が複数形になる。「Swieta Bozego Narodzenia」(クリスマス−swietaが複数形であることに注意)、「Nowy Rok」(新年)はそれぞれ固有名詞なので頭を大文字で。 |
クリスマス聖歌O Narodzeniu Panskim Bog sie rodzi, moc truchleje; Pan niebiosow obnazony, ogien krzepnie, blask ciemnieje; ma granice, Nieskonczony. Wzgardzony - okryty chwala, smiertelny - Krol nad wiekami!... A Slowo Cialem sie stalo i mieszkalo miedzy nami. |
