総選挙で市民プラットフォーム大勝
トゥスク政権樹立へ
田口雅弘
2007年10月21日に国会選挙が行われた。投票率は53.88%、2005年の40.57%を大きく上回り、国民の関心の高さがあらわれた。
23日に発表された国家選挙管理委員会(PKW)のコミュニケによると、下院は野党第1党の「市民プラットフォーム」(PO)が政権党「法と正義」(PiS)を破って第1党に躍進した。前回の総選挙で躍進して「法と正義」と連立を組んでいた極右の自衛(Samoobrona)とポーランド家族連盟(LPR)は、下院議席獲得に必要な5%にとどかなかった。一方、前回の選挙で大敗した左翼(SLD、SDPL、PD、UP)は、左派民主主義者(LiD)に集結して闘った結果、支持を大きく回復した。
下院議席数(定数460議席)では、「市民プラットフォーム」(PO)が209議席、「法と正義」が166議席、左派民主主義者(LiD)が53議席、ポーランド農民党(PSL)が31議席、ドイツ少数民族党が1議席を獲得した。自衛(Samoobrona)とポーランド家族連盟(LPR)は、上院議席数(定数100議席)では、「市民プラットフォーム」(PO)が60議席、「法と正義」が39議席、無所属が1議席を獲得した。
政党別の得票率 (単位 %)

政党別の下院議席獲得数 (単位 議席)

「市民プラットフォーム」と「法と正義」を中心に投票行動を分析すると、傾向が明確に見えてくる。都市部では「市民プラットフォーム」が強く、農村部では「法と正義」が強い。また地域別では、「市民プラットフォーム」は西北部で強く、「法と正義」は南東部で強い。たとえばワルシャワでは、「市民プラットフォーム」が54.01%獲得しているが、「法と正義」は29.66%にとどまっている。一方ノヴィ・ソンチでは「市民プラットフォーム」が28.76%と伸び悩んでいるのに対し、「法と正義」は51.35%と過半数を獲得している。さらに、「市民プラットフォーム」は高学歴者、若者に強く、「法と正義」は低学歴者、高齢層に強い。
「市民プラットフォーム」と「法と正義」のと得票率比較(単位 %)
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市民プラットフォーム |
法と正義 |
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地域 |
都市(人口50万人以上) |
55.4 |
25.9 |
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農村 |
38.5 |
31.2 |
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学歴 |
大卒 |
53.0 |
23.4 |
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小卒 |
25.9 |
43.6 |
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年齢 |
18-19歳 |
53.3 |
25.0 |
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60歳以上 |
28.4 |
41.3 |
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「市民プラットフォーム」の大勝を受けて、トゥスク党首が首相になることが確実となった。トゥスク党首は2005年の大統領選でカチンスキと争い僅差で敗れている。これまで、大統領・首相を双子の兄弟で担ってきたが、今度は宿敵同士が大統領と首相を分けることになる。事前の世論調査では、「法と正義」(PiS)が一時優勢だったが、最終的には「市民プラットフォーム」(PO)が圧勝。今後は連立に行方に焦点が移る。
前回の選挙では、「法と正義」と「市民プラットフォーム」の間で、選挙後にどちらが勝っても2党で連合する約束があったが、「法と正義」が圧勝して一方的にこの約束を反故にした経緯がある。今回は、「法と正義」vs.「市民プラットフォーム」という図式があったことから、両者の大連合は考えられない。第1党の「市民プラットフォーム」と第3党の「左派民主主義者」(LiD)が組んで過半数を確保し連立政権を作る組み合わせは、共産勢力の一掃を精力的に進めてきた「法と正義」が激しく反発。また、「市民プラットフォーム」と「左派民主主義者」の組み合わせは(旧)「連帯」と(旧)共産党の連立でもあり(現在はそれぞれ過去とはかなり違った政党になっているが)、路線の違いを超えるのは難しい。結局は、「市民プラットフォーム」と「ポーランド農民党」の連立に落ち着いた。両党の議席を合わせると240議席になり、過半数の231議席を超える。「ポーランド農民党」はこれまで左翼と連合を組んできており、いくつかの政策課題で自由市場主義を推進する「市民プラットフォーム」とすり合わせが必要である。
さて、トゥスク首相が誕生すると何が変わるのだろうか。これまでの姿勢から、米国との蜜月は終わり親EU 路線が強まる、ロシアやドイツとの対立が緩和される、自由主義市場化の路線が強まる、とみられている。2年前には失業率が20%近くに達しており、当時の総選挙の最大の関心はこの失業問題であった。今年は10%を切ることが確実視されており、むしろ人手不足感が広がっている。そうした中で、自由化に対する国民の反発は小さくなっている。
トゥスクは、「市民プラットフォーム」のマニフェスト「10の公約」を発表している。まずは、この公約でトゥスク政権の政策を予想することができる。大きなポイントは、イラクの撤退、(富裕層に有利な)フラットタックス(単一税率課税)の導入などである。賃上げや社会福祉などの財源をどう確保するかも手腕が問われるところである。
市民プラットフォームのマニフェスト「10の公約」
1.経済成長を促進し、活用します
2.国や地方自治体から給与をもらう人々の賃上げと、年金、恩給の引き上げを図ります
3.近代的高速道路網、自動車道網、橋、都市を迂回するバイパスを建設します
4.無償の医療を保証し、国民健康基金を廃止します (注:田口 国民健康基金については以下を参照 http://www.polinfojp.com/wlg/isha.htm)
5.税金を簡素化します−フラットタックスを導入し、同時に家族優遇措置を導入し、200に及ぶ公的課金を廃止します (注:田口 フラットタックスは一律15%の税率)
6.ユーロ2012に向けて競技場の建設を急ぎます (注:田口 ユーロ2012とは、2012年に開催されるサッカーUEFA欧州選手権で、ポーランドとウクライナの共催。これに向けて様々な大規模投資が進行している)
7.イラクのミッションを速やかに完了します
8.外国に出たポーランド人が家(祖国)に戻り、ポーランドに投資したくなるよう努力します
9.教育水準を上げ、インターネットを普及します
10.汚職と本気で闘います
出所) http://www.platforma.org/aktualnosci/newsy/art108,dziesiec-zobowiazan-platformy-.html
関連
市民プラットフォームの公式ホームページ http://www.platforma.org/
Gazeta Wyborcza総選挙特集ページ http://serwisy.gazeta.pl/wybory2007/0,85056.html
Rzeczpospolita総選挙特集ページ http://www2.rp.pl/temat/19435.html
国家選挙委員会公式ホームページ(Panstwowa Komisja
Wyborcza) http://www.pkw.gov.pl/
(たぐちまさひろ 2007.10.25)