
ポーランド大統領選(第二回報告)
梅田芳穂
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ポーランドの大統領選挙もあと3日を残す終盤戦に入った。
ポーランドの大統領権限はかなり制限があり、法案提出権はあるものの、議会に無視されれば大統領法案は審議されない。実際に幾つかのクファッシニェフスキ大統領寄稿法案が4年以上議会にて塩漬けになったままになっている。議会から提出された法案に対する拒否権、憲法裁判への提出権はかなり強力ではあるが、大統領自身の政策を法令化する事は、議会の過半数が大統領派で無い限り困難であり、大統領選の公約、綱領実行は議会が支持しない限り実行不可能である。
9月後半から始まったテレビキャンペーンも公約、綱領合戦と言うより、敵対する候補に対する攻撃、スキャンダル材料公開が印象的であり、米国のゴール・ブッシュ討論会と比べると、具体性に乏しく、理性的な判断材料がなかなか見出せない。米国の大統領選は実質的に候補が2人しかいない0‐1方式、即ち、レスリングやボクシングのタイトルマッチに例えられるが、ポーランドでは多数の候補者から審査員(この場合は国民)がミスを選ぶ美人コンテストのようなものとの解釈が最も妥当かと思われる。
ただしこの美人コンテスであるが、ルールが殆ど定まっていないゆえ、舞台上で候補が互いに悪口、誹謗を言い合い、そのあげく審査員達がうんざりしている効果がすでに出ている。とは言っても、いわゆるマイナス・キャンペーンは一定の効果を生んでいる。
クシャクレフスキ候補のテレビキャンペーン番組にて、クファッシニェフスキ大統領が第二次大戦中ソ連秘密警察によりウクライナのハルコフで処刑された将校達の慰霊碑開幕式における式典にて、メロメロ(本人は脚に欠陥が生じ、まともに歩けず、人に支えてもらっただけと言っているが)になっている光景と、大統領の右腕であり、国家安全事務局局長シヴィエッツ氏がカリシュ市空港にてローマ法王を猿真似し、大統領の説得にて十字を切ったり、地に接吻している場面が放送された。
結果として、クファッシニェフスキ大統領の支持率は1割以上下がり、現在では49%‐55%である。しかしながら、流れた支持率がそのままクシャクレフスキ候補支持に回るわけではなく、最も大きな利を得たのはオレホフスキ候補であった。
さて、当初予想されていた「右派統合」については、オルシェフスキ候補が9月末に選挙を断念、クシャクレフスキ支持に回ったほか、進展は見られていない。
クファッシニェフスキ大統領が第一回選にて過半数が取れるかどうかが相変わらず注目の的となっているが、非常に微妙な状況である。5年前の大統領選における、大統領の「学歴詐称」最高裁判決は有効であり、選挙までの間に競争者達により強調されるであると予想される。また、カトリック信者は教会のミサの後に投票所に行く習慣がある。上記の「猿真似事件」などにつき司教回状が出る可能性もあり、第二回選に持ちこまれる可能性はかなり高いのではないかと思われる。第二回選の対抗候補者としてはオレホフスキ候補、クシャクレフスキ候補が有力だが、カリノフスキ候補も善戦している。
先に述べたように、大統領権限はかなり制限されているので、公約、綱領もかなり似通ったものであるように思われる。
EU加盟については全面的に反対しているのはウォプシャンスキ候補とヴィレツキ候補二人のみであり、他は、多かれ少なかれ条件はつけるものの、総論的には加盟賛成である。
経済政策においては社会党のイコノヴィッチ候補が最左翼であるのに対し、コルヴィン・ミッケ候補が極端な税金節減政策導入をキャッチフレーズにしている。パヴウォフフスキ候補は民族派であり、「国内少数派民族の役割制限」を訴え、ポーランド人にあるとされている反ユダヤ感情を引き出そうとしているが、不成功に終わっているように観られる。
ワレサ元大統領は積極的なキャンペーンを行っておらず、この選挙戦を飛び台にして、1980年の「連帯」活動家を主体にし、新たに組織編成を考えているようだ。9月30日にグダンスクの隣市のソポットにて行われた会合には20年前の著名な「連帯」活動家数十人が集まった。
10月8日現地時間20時30分にはPBS世論調査機関による5万人の出口調査報告が発表される予定である。その時点で第二回選が実施されるかにつきかなりの精度で判明する。
大統領選世論調査
| 候補者 | OBOP 8月19日-21日 | PBS 10月1日 (N=2400) | PBS 10月4日 (N=1088) |
| クファシニェフスキ大統領 | 66% | 52% | 57% |
| オレホフスキ | 11% | 15% | 17% |
| クシャクレフスキ | 9% | 12% | 12% |
| カリノフスキ | 5% | 7% | 5% |
| オルシェフスキ | 3% | 2% (10月4日棄権決定) | |
| ワレサ | 2% | 4% | 2% |
| レッペル | | 4% | 2% |
| コルヴィン・ミケ | | 2% | 2% |
| その他の候補者 | 1%未満 | 1%未満 | 1%未満 |
(うめだ よしほ 2000.10.05)