「市民プラットフォーム」結成

昨年の大統領選で敗れはしたものの多くの得票を獲得したアンジェイ・オレホフスキ(Andrzej Olechowski)、国会下院議長マチェイ・プワジンスキ(Maciej Plazynski - AWS)、上院副議長ドナルド・トゥスク(Donald Tusk - UW)が中心となり、今年の国会選挙に向けた中道・リベラル新政治グループ「市民プラットホーム」(Platforma Obywatelska: PO)を結成した。結成大会は1月24日にグダンスクで行われた。この政治グループに「連帯」選挙行動(AWS)と自由同盟(UW)からどのくらいの参加があるかを巡って、激しい駆け引きが展開されている。
「市民プラットホーム」のプログラムはまだ漠然としているが、政策的には「連帯」選挙行動に参加している保守農民党(SKL)に近いと言われている。保守農民党は1997年に結成された都市と農村の両方を基盤とする右派政党で、民族の伝統を重んじながらもそれが欧州統合と対立しないとの立場をとる。また、強い国家を標榜し、特に首相を中心とした行政権力の整備を訴える。プワジンスキらは保守農民党の参加を強く望んでいるが、保守農民党党首のヤン・ロキタ(Jan Maria Rokita)は、参加に躊躇して次のように答えている: 「経験豊かな人妻(保守農民党)が一週間前に知り合ったばかりの若い男(市民プラットフォーム)に『結婚して欲しい』と求愛された。彼女は『友達でいましょう』と答えた」。保守農民党にとっては、「市民プラットホーム」に吸収されるより「連帯」選挙行動に残って「連帯」選挙行動と「市民プラットホーム」の両方への影響力を保った方が得策と判断したと思われる。しかしながら、保守農民党ナンバー2のアレクサンデル・ハル(Aleksander Hall)政治評議会議長は「市民プラットホーム」への参加に前向きで、党内での激しい綱引きが行われている。
自由同盟からは、自由同盟が設立されたときの参加政党であるリベラル派の旧自由民主会議(KLD)のメンバーが「市民プラットホーム」への参加を表明している(トゥスクは旧自由民主会議の党首だった)。自由同盟の新党首ブロニスワフ・ゲレメク( Bronislaw Geremek)は、こうした動きによって自由同盟が分裂することはないと強気の発言を繰り返しているが、自由同盟の多くの中心的メンバーが「市民プラットホーム」に流れることを止めることはできないだろう。ゲレメク自身は、「市民プラットホーム」が自由同盟のプログラムと大きく違わないことから、協力関係が形成できるとの期待を表しているが、お互いに類似したプログラムを持っているということは、選挙において票の取り合いになることも否めない。
「市民プラットホーム」が一定の勢力を確保できれば、今年の国会選挙の勢力地図は大きく変わることが予想される。1月13-14日に行われた世論調査機関PBSの調査では、23%の国民が「市民プラットホーム」に支持を表明している。「市民プラットホーム」は「連帯」選挙行動と同じ選挙準備団体で正確な意味での政党ではない。「党」(partia)という名称をとらなかったのは、他の政党同様、ポーランドでは未だに「党」という名称が共産党を連想させるため。しかし、今年の国会総選挙(春に前倒しで行われる可能性もある)後に政党として登録される予定である。近くアンジェイ・オレホフスキが選挙委員会代表に選出される見通し(オレホフスキ自身は国会議員選挙に出馬しないと見られている)。
「市民プラットホーム」プログラム案:
経済
- 比例課税の導入と最低所得者への課税免除
- 従業員の雇用を難しくするのではなく促進するような労働法典の改正
- 企業、とりわけ中小企業の発展を阻害する諸法令の撤廃
国会と地方自治
- 国会選挙の全国区比例代表制候補者リスト廃止 (参考: 国会選挙規定)
- 将来的に比例代表制を廃止し、各候補者の得票率によって選出
- 国会議員特権を制限
- 特定政党に対する公的資金による公式・非公式の献金を禁止
- 県知事、市長のの直接選挙制導入
- 地方議会議員数の削減
- 国家機関・地方自治体機関職員の採用において、従来の採用方式に加えコンクール制を並行して導入
- 汚職犯罪において、贈賄側と収賄側を結託させないために、収賄側のみを罰する様法改正
教育
- すべての児童が優良な学校で学べ、教科書を入手し、第二の朝食(10時頃に食べるサンドイッチ等)を食べられるように改善
- 都市と農村における大きな教育格差縮小
農村
(2001.01.24)


−梅田芳穂氏のコメント−
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- 現在「プラットフォーム」(Platforma)と呼ばれている政治グループは、将来政党に発展する見込みはあるものの、現時点では時期選挙協力グループと位置付けるのが最も妥当ではないかと思われます。
- 「連帯」選挙行動(AWS)代表クシャクレフスキの大統領選における敗退、その後のSKL、PPHDのクシャクレフスキ離れ、大統領挙に絡む選挙資金源の不透明さ、そして1票に対するコスト(クファッシニェフスキ大統領の3倍)などの要素がRS‐AWS内部でも問題となっており、PO設立に拍車をかけたものと解釈できます。
- UW全国大会においてのKLD敗退(UW全国委員会に2議席しか取れなかった)の恨みがKLD離反の主な原因と言われていますが、UW発足当時からエトス派と旧KLDのリベラル派の間に摩擦があり、エトス派の中ではかえってすっきりしたとの意見も多く観られます。
- RS‐AWS内部では、Radio Marijaに近い民族派グループが活発な動きを始めており、手始めにワルシャワ‐ザヘンタ美術館のAnda Rettenberg館長(ユダヤ系)更迭を求める公開状を公表しました。これも新たなプラットフォームに発展する可能性があります。
- POにつきRS-AWS内の第1連帯グループや、いわゆるプラグマティストは、反クシャクレフスキ色を、はっきり明言するようになりつつあるものの、PO参加については静観の立場をとっておりおります。あるAWSの反クシャクレフスキ上院議員は、「元共産政権下の産業スパイ」(オレホフスキ)、「委員長になる予定でAWS再編契約に署名したにもかかわらずインクの乾かない内に約束を破棄した男」(プワジンスキ)、「UW全国大会で敗北したフラストレーションの塊のリベラリスト」(トゥスク)と運命を共にする気は毛頭ないとすら言っています。
- 世論調査では新しい選択肢としてPOが相当の支持率を得ておりますが、政局がある程度安定し、各派閥間の調整が進むにつれ、新たなる多極化も進み、AWSはクシャクレフスキを頭とするRadio Marijaの民族派(約100名)を残すのみとなる可能性も在ります。その場合UWとPOが協力関係を設立する事もシナリオの一つとして考えられます。
- 現状、総選挙は秋の予定ですが、POの出方次第で6月になる可能性も在り、この後1ヶ月間かなり激しい駆引きが行われると予想されます。
(2001.01.22)

ポーランドの政党勢力
| | 党員(人) | 下院議員(人) | 地方議会議員(人) | 特徴 |
| AWS | SKL | 約18,000 | 27(29)(*) | 約2,500 | |
| PPChD | 約10,000 | 24 | 約400 | |
| ZChN | 約18,000 | 21 | − | |
| RS | 約40,000 | 40 | 約3,000 | |
| SLD | 約101,000 | 161 | 約8,000 | 国会・地方議会の両方で勢力を保つ |
| UW | 約20,000 | 53 | 約15,000 | 都市で強い |
| PSL | 約140,000 | 26 | 約9,000 | 国会では弱いが、地方議会、農村で強い |
- (*) 院内グループ「保守農民グループ」参加者は29名。
- 党員はいずれも推計値。
- AWS−「連帯」選挙行動、SKL−保守農民党、PPChD−ポーランドキリスト教民主主義者同盟、ZChN−国民キリスト教統一党、RS−社会運動、SLD−民主左翼連合、UW−自由同盟、PSL−ポーランド農民党。
- 参照: Rzeczpospolita, 2001.1.30.

関連HP
