ポーランド人の稼ぎはいくら?

翻訳・編集 中村史絵


 ポーランドの日刊紙『ガゼタ・ヴィボルチャ』(Gazeta Wyborcza)紙は、定期的にポーランド人の職業別給与調査を発表している。2000年秋のポーランド人の給与は次のとおり(1ズウォティ=約30円)。

修学中の修道士のお小遣いが20ズウォティ(昨年度調査結果)から5ズウォティアップしたのは、『ガゼタ・ヴィボルチャ』紙の調査のおかげ!?

給与

(月額)

職業

地域

25

修学中の修道士がもらう小遣い{住居}

ワルシャワ 

150

浮浪者 (空き瓶や、ちり紙を集めて売る。もしも貴金属を盗んで売れた場合は収入増)

ワルシャワ

250

女子学生アルバイト(週末に窓ガラス拭き、掃除、買い物など)

ウッヂ

300

漁師 (私営の漁船、価格の2.5%がプラスされる。天気がよければ2000ズウォティを一月で稼げる) 

ワルシャワ 

400

果物・野菜のキオスクの所有者

ワルシャワ 

  500

夜間の鉄道の車両洗い、学生アルバイト

ウッヂ

  500

3部リーグのサッカー選手の奨学金(勝試合につき400ズウォティ、年間契約金5000ズウォティ) 

ウッヂ 

600

鉄道の駅の切符売り、日曜、祝日出勤手当てあり 

ワルシャワ

600

新卒のバレリーナ

ウッヂ 

  660

理学療法士 

ウッヂ

600

日本食レストランの新参ウエイトレス、給与とほぼ同額のチップ 

ワルシャワ 

700

スーパーマーケットのレジ係 

ワルシャワ 

705

幼稚園教諭

ホジュフ 

  800

自動車整備士

ジェローナグラ

  800

看護婦、勤続20年 

グダニスク 

  800

3星ホテルの受付 

ポッドベスキッド 

803

年金(30年間教師だった人) 

ウッヂ 

824

銀行の顧客サービス部門の職員

ワルシャワ

  840

年金(国鉄-PKP-の職員だった人)

ワルシャワ 

  850

新参の劇場俳優

ワルシャワ 

  930

ワルシャワ大学博士課程の奨学金 

ワルシャワ 

  944

ファーストフード店での夜間勤務 

オポーレ 

  1000

映画館の改札係 

ヴロツワフ

  1000

湖畔の保養所の救助隊員(住居、食事付、週7日労働) 

 

  1000

学生アルバイト(週末に両替所で) 

シュチェチン 

  1200

公立高校の教師(非常勤講師) 

ワルシャワ

1250

公立小学校の校長(管理職手当て約420ズウォティ)

ワルシャワ 

1250

ウクライナ人女性、老人の世話(住居) 

ワルシャワ 

1300

タクシー運転手 

ウッヂ

  1300

製紙工場の職人 

ワルシャワ 

  1305

アルコール中毒患者の心理カウンセラー(1種免許、2種免許だと45ズウォティアップ) 

ワルシャワ

  1400

建設会社の若手のエンジニア 

ケルツエ

  1400

電話交換手(国営電話会社) 

オルシュティン

  1458

町長{携帯電話} 

シロンスク 

  1500

国営ラジオ局のレポーター 

ワルシャワ 

  1500

教会のオルガニスト 

ワルシャワ 

1500

[DAEWOO]の事務職 

ワルシャワ 

1500

映画館の技師

ポズナニ

  1500

出版社の校正係 

ワルシャワ

  1550

図書室の司書(ウッヂ大学) 

ウッヂ 

  1580

パトロールにでる警察官(ボーナス、制服手当て約2000ズウォティ) 

 

  1600

郵便局員(勤続20年) 

 

1935

トランバイの運転手 

ウッヂ 

  1958

公共バスの運転手

ウッヂ 

  2000

左官 

ウッヂ 

  2000

美容師(美容院勤務を辞めて、顧客先へ出向く方法を取っている。税金は払っていない。) 

ワルシャワ 

  2000

歯科医(私営) 

ヴロツワフ 

  2000

ディスコのDJ(一回のパーティーにつき150~250ズウォティ、一曲の注文につき20ズウォティ) 

ヴロツワフ 

2000

「マクドナルド」のマネージャー(社用車フォード、携帯電話-会社が支払う-、店内の食事無料)

ジェジュフ 

  2050

看護婦(私営のクリニック、当直勤務に300~400ズウォティ) 

ワルシャワ 

  2100

大型トラックの運転手(夜勤に10%) 

エルブロング 

  2400

森林管理人

オルシュティン 

  2500

陸軍大佐(宿舎、軍用車、軍服)

 

  2500

売春宿の警備員 

チェンストホーバ 

  2500

警察学校の講師の年金 

レギオノボ 

  2693

船長(月給に加えて外貨収入2700ドルあり) 

シュチェチン 

  2700

墓堀人 

ウッヂ

  2710

警察署長(ボーナス、制服手当て) 

 

  3000

「LOT」のスチュワーデス(3ヶ月に一回制服の洗濯代、ストッキング代として、1000ズウォティ) 

 

  3400

エンジニア(建設会社) 

ケルツェ 

  3500

1部リーグのホッケー選手 (勝試合につき300~400ズウォティ) 

 

  3600

外資系の広告会社勤務3年 

ワルシャワ 

  3925

地方裁判所の裁判官 

 

  4100

民放テレビ局のジャーナリスト 

ワルシャワ

  5000

市長

チェンストホーバ近郊 

  5000

電話会社の部長(ボーナス5000ズウォティ、社用車、ノートパソコン、携帯電話-200ズウォティまでは会社が払う-)

ワルシャワ

  5000

売春婦 

ウッヂ 

5000

若手の弁護士

ワルシャワ近郊 

  6000

新参の法律家 

ワルシャワ 

7000

外資系観光会社の課長 

ワルシャワ 

8500

炭鉱の部長(ボーナス、運転手付社用車)

 

9400

著名なジャーナリスト

ワルシャワ

10000

1部リーグで有力なチームのサッカー選手

 

14500

いわゆるテレフォンクラブの売春婦(男性)

ワルシャワ

80000

今年度の文学賞受賞者が受け取った賞金

 

75000

1部リーグのあるチームの3名の選手に、この金額で1試合を売らないかという提案があった

 

125000

最優秀バスケットボール選手

 

21000000

アンジェイ・ゴオータがマイク・タイソンと闘った後に受け取った金額の総計

 

(注)給与額に*がついている場合は「手取りの金額」を意味する。

(出所) Gazeta Wyborcza. 2000.09.11, 09.18, 09.25,10.02,10.16,10.23号を基礎に作成。

(なかむら しえ・JOCV 2000.11.08)


資料

 

(・・・)

 生活格差は,体制転換に伴うスクラップ・アンド・ビルドで大きく開いた。

(・・・)

この格差は,西欧諸国や周辺の移行諸国と比較して特に大きいものではいが,正確なデータの取得がきわめて困難である。なぜならば,現在のポーランドにおいて,給与額の公表は一種のタブーになっているからである。雇用者は,報酬を提示して人材公募することによって,高い市場の給与相場が現在雇用している従業員に知れてしまい,彼らから高給を要求されることを恐れているといわれる。

(・・・)

特徴的なのは,民間部門の格差が国営部門の格差より大きく,また相対的に民間の給与水準の方が低くなっていることである。そして,「新富裕層(ニューリッチ)」と「新貧困層(ニュープアー)」が誕生したことも大きな変化である。とりわけ問題となっているのは,転換ショックによる「一時的貧困者」ではなく,救済の困難な「恒常的貧困者」の存在である。この層は,失業者の25-30%を占め,主に学歴が低くアルコール常飲者が多い。後述するように,この層の対応においては,失業保険や福祉給付より教育が重要な意味を持つ。

失業率は,1990年のバルツェロヴィチ・プラン実施から急速に上昇し,1991年第3四半期には10%を超え(10.7%),1994年第1四半期にピークに達し16.7%(295万人)を記録する4)。その後失業率は減少傾向を示すが,1997年より早期年金給付を受けている者や職業再訓練を受けている者を失業者の概念から除外したにもかかわらず,1998年末に10.4%,1999年末に13.0%と再び上昇傾向に転じた。

(・・・)

セーフティネットの整備は,バルツェロヴィチ・プラン実施時からすでに試みられているが,フレームワークが固まってきたのは1996-1997年である。基本的な方向は,社会政策も含めて市場化していくことであるが,その中で国家および地方自治体の権限と責任の範囲はどこまでなのか,またどの程度市場の論理に委ねるのか(どこまでコマーシャルベースの医療・福祉サービスを認めるのか)が大きな争点になった。1999年には四大改革(地方行政改革,健康・保険改革,教育改革,年金改革)が実施され,EU加盟に向けた制度整備が本格化した。

(・・・)

また,これらの制度と並んで,賃金や労働条件,社会保障などに関わる交渉形態も大きく変わった。体制転換期においては,「円卓会議」という,当時の政治システムの外で国民的合意が形成されたが,移行期においては政府・経営者・労働組合代表からなる社会・経済問題三者会議が社会的合意を形成するメカニズムとして新しいシステムに組み込まれた(1994年発足)。しかし,主に「連帯」と全国労働組合連合(OPZZ)の対立から,この三者会議は国民的合意の形成を達成するにはほど遠い役割しか果たしていない。実質的には,各企業において労働組合と戦略的投資家との間で交わされる「ソーシャル・パッケージ」が雇用,労働条件,賃金水準などの基準を形成している(外資参入の場合も同様)。近い将来においては,主要大企業で締結された「ソーシャル・パッケージ」が,周辺企業の労働条件等のモデルとなっていくことが考えられる。

(・・・)

 

(出所)田口雅弘「ポーランドにおける転換ショックとセーフティネット構築」、『比較経済体制学会会報』、比較経済体制学会、2000年、より抜粋。