ポーランド外国投資公社(PAIZ)

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良質な労働力の宝庫


豊富な労働力

 ポーランドの人口は3864万人(1996年末)で、ロシア、ドイツ、イタリア、イギリス、フランス、ウクライナ、スペインについでヨーロッパ第8位の規模である。また、チェコ、ハンガリーの4倍近い規模である。
 ポーランドの特徴は若者たちの国であるということである。1970年代後半から1980年代前半にかけて、ヨーロッパでも上位の自然成長率を記録しており、現在人口に占める若者の数は非常に多い。人口に占める18〜44歳人口の割合は40.2%(1985年)で、この層がポーランド経済のダイナミズムを支えている。また、伝統的に夫婦共働きの家庭が多く、質の高い女性労働力も豊富である。
 労働人口総数は約1500万人で、そのうち62%が民間部門で働いている。鉱工業労働者は373万人、また、農林・漁業従事者は405万人である。
 都市人口は61.9%で、その約9%にあたる215万人が首都ワルシャワおよびその周辺に住んでいる。鉱工業都市カトヴィッツェ、伝統のある商工業都市ヴロツワフ、繊維工業都市ウッジ、毎年国際見本市が開かれるポズナン、古都クラクフ、バルト海沿岸の工業都市グダンスクも人口50万〜100万の大都市で、豊富な労働力が集中している。
 労働力コストが安いのも、ポーランドの大きな魅力のひとつである。1996年末の全産業平均月給は手取り985.32ズウォティ(約41,000円)で、うち工業部門では1139.57ズウォティ(約47,500円)であった。西欧先進諸国の数分の1のコストである。

高い労働力の質

 ポーランドは、他の中欧諸国と並んで高い教育水準を誇っている。労働者の最終学歴別割合は、大卒(4〜6年制)が全体の11%、普通高校・職業高校卒(4〜5年制)が35%、基礎職業学校卒(2〜3年制)が30%、小卒(8年制・義務教育)が24%である。8年制の小学校を卒業すると、様々なコースが用意されており、高校で大学を目指して勉強する道もあれば、専門技術を身につけて社会に出る道もある。普通高校・職業高校には「マトゥーラ」と呼ばれる卒業試験があり、高い水準を要求される。大学は少数エリート教育で、社会の中心となる人材が養成されている。1996年(*97?)の「マトゥーラ」に合格した高校卒業生約37万人のうち、約25万人が大学に進学している。
 ポーランド人は外国語の習得には熱心で、特に最近では英語の学習熱が高まっている。ほとんどの中堅・大企業、公共機関等で英語が通用するといっても良いであろう。また、日本語教育の伝統は古く、レベルはヨーロッパでもトップクラスである。ワルシャワ大学、クラクフ大学、ポズナン大学をはじめとするいくつかの大学で日本学科が設置されている。
 国民の同質性は高く、社会や職場で基本的に民族的・宗教的対立はない。国民全体に占めるポーランド民族の割合が98.7%である。また、9割近くの国民がカトリックで、他の宗教や価値観に対しても伝統的に寛容である。
 ところで、海外では「ポローニャ」と呼ばれる1000万人以上のポーランド系住民が暮らしている。ワルシャワに続くポーランド第2の都市はシカゴだといわれるくらいである。この「ポローニャ」との交流は以前から盛んで、旧体制下でも他の旧社会主義諸国より比較的自由に西側に旅行することができた。ポーランド人はこうした交流を通じて早くから市場経済にふれてきたのである。したがって、市場経済や近代的な経営管理に対しても適応能力は高い。

失業問題


 失業率は、転換リセッションの影響で一時16.7%(1994年第1四半期)にも達したが、その後の急速な経済成長により、現在は13.5%(1997年1月)にまで低下している。失業率低下傾向は今後も続くと予測される。
 ポーランドの失業の特徴は、@地域格差が大きい、A若者の失業率が高い、B長期失業者が多い、C非熟練労働者の失業率が高い、という点である。大都市圏ではほぼ失業問題は解消し、むしろ人手不足の都市も出ているが、国営農場が多い地域や旧ソ連向けの大規模輸出企業に頼って経済を維持してきた地方都市では依然リストラが進まず、コシャリン県では失業率が30%にも達している。
 しかしながら、政府が手厚い失業給付を支給したため、支給を受けるため正規の職につかなかったり、主婦が失業者として職安に登録したりして、統計上の失業率を引き上げる結果となった点も注目に値する。中央統計局の調査によると、実際に約200万人が、未登録の家内工業や国境貿易で生計を立てている。失業者が多い割には購買欲が盛んで、消費が景気を引っ張っていることだけ見ても、統計上の数値と実態がかなり違っていることに気付くだろう。
 都市部では、会計士、弁護士、セールスマン、コンピュータのオペレーターなどへの求人率が高い。

労働組合の明暗

 ポーランドでは伝統的に労働組合運動が盛んで、1989年代の「連帯」運動の主導的役割を果たしたのも労働組合であった。しかし、労働組合は現在大きなジレンマに直面している。労働組合にとって従業員の雇用確保は重要な責務であるが、これにこだわり続けると、その企業は投資家に敬遠され、融資を受けられずに倒産してしまうことになるからである。実際、「連帯」運動発祥の地「グダンスク造船所」は、赤字の責任は政府にあるとの「連帯」の強い主張にもかかわらず、融資を受けられずに倒産した。一方、大胆な民営化・合理化を受け入れた「シュチェチン造船所」は、近代的な造船所として復活した。民営化の波の中で、労働組合は新しい役割を模索している。
 全国のストライキ件数は、「連帯」政権の樹立を支持して一時低下したが、民営化・リストラによる摩擦が拡大する中で、再び増加した。しかし1994年以降、リストラの大きな波が一段落すると、ストライキ件数は再び大幅に減少した。不況のまっただ中にあった1993年には7千件以上あったストライキも、1995年には42件、1996年にはわずか21件にまで低下している。
 なお、ポーランドの労働組合は、戦前からの長い歴史と、1980年代の「連帯」運動 の経験を通じて成熟しており、非合法スト、山猫ストなどはほとんどない。長い組合運動の歴史の中で、経営側・労働組合側の協議のルールが確立されているといえる。現在、成熟したポーランドの労働組合は、強硬手段による要求貫徹型ではなく、協議型の組合運動を確立しつつある。例えば賃上げは、毎年行われる組合連合、経営者団体、政府の三者協議委員会の決定を尊重して実施される。新憲法においても「社会的市場経済システム」という概念が盛り込まれ、労働紛争を避けて協議・話し合いにより摩擦を解決する精神が定着しつつある。

(田口雅弘)











データ加工: 梅田芳穂、横田武重 (1999.01.31)





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