第150回国会衆議院外務委員会
ポーランド問題に関する質疑応答






 2000年11月8日第150回国会衆議院外務委員会で、ポーランド問題についての質疑応答があった。質問したのは前田雄吉衆議院議員(民主党)。以下は、質疑の要旨である(国会議事録からの要約 文責: 田口)。



ポーランド及びウクライナの外交上の重要性に対する認識


前田委員 ポーランド及びウクライナとの関係は、対ロ政策において重要な位置をこれから占めてくると思われる。この2国の重要性が日本外交の中で見落とされているのではないか。
 重要性を持つと主張する第一の理由は、地政学的見地からである。 ポーランドの東側の国境がNATOの東の極限となって、安全保障上の重要性が一層増してきました。この国境を挟んで対峙するのはウクライナである。ウクライナは、単に世界の穀倉地帯ではなくて、旧ソ連の遺産である軍需産業を含む機甲戦力、そしてロシアの黒海艦隊、核兵器を有する、人口5300万人を抱える欧州の潜在的な大国だ。このウクライナとポーランドの地域の安定化に日本が貢献することは、EU圏あるいはロシア圏の安全保障上あるいは経済上の安定にも貢献することにつながっていくと思う。ここで日本外交の重要な戦略的なカードを保有することになると考える。
 第二の理由は、経済的見地からである。ポーランド経済は安定し高度成長を維持している。このままいけばポーランド経済は、早ければ2005年、遅くとも2010年までには確実にEU経済を支える経済大国の一員になっていくと考える。ポーランドはヨーロッパの中心に位置し、ヨーロッパでのヒト、モノ、カネの流れに重大な変化をもたらすだろう。しかし、日本にはグローバル化した社会における対ロシア政策、外交戦略上の視点が欠落し、ポーランドに対する認識が低かった。また、冷戦構造の枠組みにとらわれた東欧という名の中部ヨーロッパ諸国の軽視があり、これが1990年代の日本の対ユーラシア外交の問題点ではなかったかと思う。
 こうした対中部ヨーロッパ政策は、21世紀を迎えるに当たって、今転換されるべき時期に来ているのではないではないか。ロシア経済も、必ず復興するであろう。このとき、経済大国ドイツとの間にある成長した中欧の大国のポーランドは、非常に我が国にとって外交戦略上重要な国になっていくと思う。この重要な国に対して日本政府はどういう外交戦略を持っているのか、また、それに基づいてどのようなことを行って来たのか。

浅野政務次官 ポーランドに対する政府の認識: 中東欧諸国の中では、国土、人口、経済力ともに最大の規模を持つ大国である。また、東西ヨーロッパの間に位置する国として重要な位置を占めている。第二次大戦後の社会主義体制下においても、ポーランドの人々は一貫して民主化運動を続け、1989年にヨーロッパの旧社会主義諸国の中で最初の非社会主義政権を樹立して、この地域の改革の先駆けの役割を果たしてきたことも歴史の事実だ。今日のポーランドの対外政策の基本は、ヨーロッパの本流への回帰である。
 ポーランドとの関係強化に努力: 我が国としては、中東欧諸国の大国で民主主義という共通の価値観を持っているポーランドの発展がヨーロッパ自身の安定と発展に重要な意義を持つととらえている。
 具体的な対策、方策は4つ:
(1)ポーランドが民主化の基盤を固めるためには市場経済を強化することが重要という観点から、外国の民間企業の投資活動を円滑にするために、投資セミナーの実施などを支援。
(2)政府自身の事業でも、知的支援、環境保全などの分野を中心としたODA、政府開発援助を通じて支援。
(3)クラクフの日本美術・技術センターに象徴されるように、文化の交流の拡大も図っている。ショパン・コンクールでも日本人の活躍が顕著。
(4)国際社会における対等なパートナーとして、国連の改革、地球温暖化などの国際社会が抱える諸問題についても、ともに信頼し合って協力して取り組んでいけると考える。




「東欧」という呼称の変更


前田委員 文化交流が進んでいることはよくわかるが、今後は外交上あるいは安全保障上しっかりとした関係を結んでいく必要があると思う。
 日本の外務省の中でのポーランドを所管される部署が外務省の欧亜局東欧課であるが、この「東欧」という名称は自由主義陣営の西欧の西に対するもので、冷戦期の遺物である。アメリカ、イギリス等はセントラル・ヨーロッパという言い方をしているので、この1月の省庁再編に当たりぜひ改称していただきたい。

浅野政務次官 冷戦構造の崩壊後、ポーランドなどの旧東欧諸国は、それまでの社会主義政権下における旧ソ連寄りの政策から西ヨーロッパ諸国を志向した外交政策を展開しており、みずから中東欧と呼んでいる。また、国際的にも、旧東欧についてはセントラル・アンド・イースタン・ヨーロッパ、中東欧という呼び名が通常使われている。こうした世界の動向をとらえて、御指摘のとおり、省庁再編の機会に、これまでポーランドなどの旧東欧諸国を所管していた東欧課の名称を中・東欧課と変更することに決めている。




要人のポーランド訪問


前田委員 ポーランドへの、日本の要人訪問がどのような状況にあるか。

浅野政務次官 1987年に中曽根総理、1990年に海部総理が訪問。1985年には安倍外務大臣、1990年には中山外務大臣、1997年に池田外務大臣がそれぞれ訪問。
 残念なのは、2000年6月にポーランドで開催された民主主義と人権の会議に河野外務大臣が招待されたが、衆議院選挙で行けなかった。次の機会に大臣も含め政府要人の訪問を検討したい。

前田委員 ということは、十年間も内閣総理大臣が行っていないわけだ。一方、ポーランドは、国交樹立80周年を祝って、1998年にはクファシニェフスキ大統領が訪日、1999年にはブゼク首相が訪日している。一方通行で肩身が狭い思いはないか。

河野国務大臣 日程の調整がつけば中東欧圏に行ってみたい。ただ、いつどこに行くかというようなことを今申し上げられる状況ではない。議員のお考えは十分承った。




人的交流


前田委員 日本、ポーランドの関係をさらに深めるために、人的交流、企業間の経済レベルでの交流、文化レベルでの交流が必要。人的交流の拡大について、現地ワルシャワで、人的交流の拡大をお願いしたいという御意見を賜ってきた。在ポーランド大使館資料によると、日本への国費留学生の数は、大使館推薦、大学推薦を含めて平成9年は35名、10年は39名、11年は32名、そして12年は37名の予定で、ほとんど増加していない。欧州諸国の中のロシア、ルーマニア、ドイツ、フランス、ブルガリア、ハンガリーに次いで第七番目のお粗末な状況だ。諸施策は考えてもらえないか。

東郷政府参考人 ポーランドのヨーロッパにおける地政学的重要性ということにかんがみて、でき得る限り留学生をふやしたいという所存で努力している。財政状況やその他の国のバランスも考慮に入れて、できる限りの努力したい。




ポーランド・日本情報工科大学支援プロジェクト


前田委員 1996年より行われているJICAのポーランド・日本情報工科大学支援プロジェクトは、ゼロから大学を立ち上げて、今やこの大学がバランスシートも非常によく、非国立分野での大学のポーランド内のランキングナンバーワンになったという、自立を助ける非常にいい援助協力の例であったと思う。こうした振興協力をさらに進めていくべきではないか。
 現地で、工科大学学長から、ウクライナの学生を受け入れるポーランド・日本情報工科大学の分校をウクライナ国境に近いポーランド領内で開設したいという要請を受けてきた。ウクライナは軍事大国で、経済的な安定が必要であり、ウクライナの経済の発展を支える人材を育成する必要がある。そうした意味で、日本とポーランドが協力してウクライナを支援することは意義がある。
 ポーランドの外務次官も、日本、ポーランド両国は、対ロシアということからも安全保障上の共通の利益があり、日本・ポーランドが共同して第三国のウクライナへ人的交流を進めるということは非常に重要なことであると考えている。このポーランド・日本工科大学の分校の設立支援策についての考えを伺いたい。

浅野政務次官 そういう個々のぜひ応援をさせていただきたいような、文化無償のような形で応援をさせていただきたいようなすばらしいプロジェクトについては、地元の在外公館を通じて私どもの方へ上げていただければ、真剣に検討をさせていただきたい。

飯村政府参考人 日本・ポーランド情報工科大学は非常に高い評価を受けている。来年の3月にプロジェクトが切れるので、その後どうするかポーランド政府内でも検討中のようで、そのうちの一つが分校の設立ということだと考えている。 ポーランド政府からの正式な要請を待って、十分真剣に検討の上対処していきたい。




経済交流


前田委員 ポーランドはEU加盟の高い環境基準をクリアーするため、特に環境関連の日本企業のポーランド進出を求めている。日本の対ポーランド投資は3.7億ドル(その半分の2億ドルがトヨタ)で、さらなる協力を求める声がポーランドから寄せられいる。私は、従来より、日本の二十一世紀のあるべき外交の柱として環境外交が挙げられる、そして日本は国際貢献国家になるべきだ、こう考えてきた。ハードパワーによる外交ではなくて、こうした環境を含むソフトパワーに基づく外交を何とか推進していただきたい、このためにもポーランドへの環境の技術協力を進めたらいかがかと思うが、この点についてどのように考えているか。

東郷政府参考人 ポーランドの体制転換が行われた直後から、ポーランドにおける環境問題の深刻さということについては認識していた。1990年に、まず政府環境問題調査団を派遣し、その後、政府は一貫した問題意識を持って、ポーランドにおける環境問題に関して、技術協力を中心にして、何ができるかということを真剣に追求してきた。具体的には:
(1)JICAを通じた技術協力を中心としたさまざまな協力。
(2)開発調査。コジェニツェ石炭火力発電所の排煙脱硫計画、省エネルギー計画、ポズナニ市廃棄物処理計画など。
(3)環境分野の特別のコースを設けた研修員受け入れ。
こういう政府の努力が民間の投資活動の方に好ましい影響を与えて環境分野における投資というものにつながっていくことを期待しながら努力している。




ポーランドにおける日本研究文献のデータベース化


前田委員 日ポ交流は芸術面だけでなく社会科学分野でも拡大することが必要と考える。ポーランドでの日本研究は150年の蓄積があり、インターネットを活用したデータベースを作って文献の共通化をはかルべきだ。これは歴史認識の共有化にもつながり、より深い文化交流ができる。この点についてどう考えるか。

東郷政府参考人 社会科学の分野を中心とする文献を日本とポーランドで共有していく、そういう目的のデータベースをつくっていくということは大変重要な視点だ。まず、日本において実際に研究している人たちがどういうニーズとどういう要請を持っておられるかということをよく聞いて、両国間の共通のデータベースとして有益なものは何かということをよく研究した上で、可能な支援というものをやっていきたいと考えている。




中部国際空港へのポーランド航空の乗り入れ


前田委員 ポーランド航空の日本乗り入れについて、1994年に協定を結んでいるが実現していない。トヨタ、東海ゴムなど中部地域の企業がポーランドに進出する中で、中部国際空港完成後のポーランド航空の乗り入れを積極的に推進いただきたい。

深谷政府参考人 中部国際空港は2005年開港予定。開港後に名古屋とポーランドの間に相当の需要が見込まれ、かつ、ポーランドあるいは日本のエアラインが、航空企業が具体的な運航計画を立ててということであれば、ポーランドと日本の航空当局間の協議などを経て直行便が開設されるという可能性は十分あると認識している。

前田委員 どうもありがとうございました。



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(2001.01.25)