
これがポーランド版『レオン』?
置村公男
映画『レオン』と言えば、リュック・ベッソン監督、俳優ジャン・レノというフランス映画を
代表する売れり子コンビがハリウッドに進出した名作である。エリック・セラの切ないメロディ
(歌うはスティング)をバックに、殺し屋レオンと無垢な少女の純愛が展開される。ハードボイル
ドではあるが、ラブストーリーでもある.そのポーランド版という触れ込みでミニコミ誌や情報誌
にポーランド映画『SARA』マチェイ・シレシツキ監督)が紹介された。見逃すわけにはいかない。
劇場は天六ユウラク座。本家『レオン』が大手の直営劇場で公開されていたのに比べる
と、いかにもうらぷれた街の場末の映画館である。勿論、この劇場にも中国映画などを観るために何度か足を運んでいた
ので知らない劇場ではなかった。それにしても本家が公開された劇場との落差は大きい。
肝腎の内容の方はというと、リメイク作品やコピー作品にありがちな「B級」の臭いがふんぷん
とする作品である。本家は今をときめくりリュック・ペンソンやジャン・レノを起用しただけあっ
て、スタイリッシュな作品で、重厚な印象を観客に与える。しかし、ポーランド版はどこかチープ
な(安っぽい)感じがする。コミカルな雰囲気も全編に流れている。"Kiler"(ヴィスワ
19号の拙稿「'98夏・ポーランド3部作+1、その1:98年夏・ポーランド最新映画事情」を
参照)で主役を演じていた役者が出ていたことからもこの映画の持つコミカルな雰囲気をお分かり
いただけると思う。主役の中年殺し屋の名前は本家と同じ「レオン」ではあるが、彼は何故かゲイ
リー・オールドマンく本家で(ヒール役=敵役をキレた演技で魅せている俳優)に似ている。
マフィアのボスの娘(彼女の名前がSARA)を警護し、両者は互いに反発しながらも惹かれてい
くという筋は日本晩画の『探偵物語』(1983年、根岸吉太郎監督、松田優作・薬師丸ひろ子主
演)を思い出させる。また、殺し屋と少女の愛の形も本家が非常にプラトニックなものに仕上げら
れているのに比べて、ポーランド版は両者の肉体的な絡みの場面が多く、艶めかしい。率直に言って、
R指定になっても不思議はない程である。中年殺し屋と少女の関係はまるでスタンリー・キューブ
リック監督の映画『ロリータ』(最近、リメイク作品が公開)を彷彿とさせるものがある。即ち、
滑稽でありさえするのだ。映画の作り手の遊び心も見えてくる。マフィアのボスと子分連はいつも
テレビ画面で映画『ゴッド・ファーザー』を観ている。ボスの話し方はマーロン・ブランド演ずる
ドン・コルレオーネそっくりである。更にサラの部屋には本家の『レオン』のポスターがはって
ある。ここまで来たら、これはもうリメイクではない、パロディである。
本家『レオン』のハードボイルドな味わいや切なさを期待すると裏切られるであろう。しかし、
B級パロディ作品と思って観ると結構楽しめると思う。少しうがった見方であろうか?
(『WISLA』第21号 1999年6月1日発行)