

スープ類 (金子潤郎 『ワルシャワリビングガイド』より 1994.07)
スープの訳とされているポーランド語のズッパは元来、具が入ったものを指しているようだ。米や麦を入れたどろっとしたおかゆのようなものや肉や野菜がはいっているものがこのズッパに当たる。それでは普通のスープは何というかというと、コンソメとかブイヨンといわれている。なるほどビートを使ったエンジ色のバルシチと呼ばれるものも、具が入っていないものは、czysty(きれいな、澄んだ)と言われ、ビートスープとは言われないし、トマトスープといえば、大抵マカロニか米が入っている。しかし、レストラン等のメニューではもちろん、一般的にはズッパはスープのことだ。変わったものとしては、キュウリのピクルスのスープや発酵キャベツのスープ等がある。夏になると上記のバルシチに生クリームを入れたピンク色のフォドニック(chlodnik)と呼ばれる冷めた(温かくない)スープも食べられる。日本人に一番好まれるのは、白バルシチ、通称ジューレックと言われる酸味のあるスープで、大抵ソーセージやゆで卵が入っている。これは肉と野菜を煮込んだだしに、パンや小麦粉等を発酵させた液体をいれたものだが、じゃがいもなどの具を入れたりしたものもある。もう一つズッパというよりも、一品料理でよく食べられるフラキ(flaki)という牛や鶏の食道の部分を刻んで、コンソメで煮込んだ一種の臓物料理がある。意外と食べやすいが、ちょっと匂いがキツイのが難点。またグラシュ(オーストリアやハンガリーで一般的)といわれる肉の煮込み料理がありますが、ポーランド料理では牛肉の代わりに鶏の心臓を煮込んだものもある(gulasz z serc)。
肉料理
ポーランドでは牛よりも豚が好んで食べられる。肉屋でも豚肉の方が値段が高く、レストランでも料理の数が多いようだ。場所によっては羊やうさぎ、鹿などが食べられる所もあるが、一般家庭では圧倒的に豚か牛を料理することが多い。また鶏やあひる、七面鳥も食べるが、これらの肉はdrob(家禽)といわれ、肉屋にはないが八百屋で売られていたりすることもあり、肉として一段したに見られているようなところがある。以前は鶏肉といえば、一羽丸ごとか、よくても背中を割った半分を買うしかなく、自分でさばかなければならなかったが、最近はささ身はささ身、手羽は手羽とわけて買うことができるので楽になっている。
もっとも一般的な肉料理は豚ののカツレツ。レストランによっては骨付きででてくるところもある。串刺しの肉にウォッカを振りかけたものや、豚足なども一般的。付け合わせはじゃがいもをゆでたものやキャベツやビートの酢漬けサラダといったところ。 変わったところでは、タタールステーキといわれる牛の生肉にピクルスやタマネギ、卵黄、その他香辛料を混ぜたものを食べる。
また、肉の加工品として腸詰めやハムは絶品。太さも、脂肪分も、食べ方も、調理法も非常に富んでいて、種類も多く、どれがおいしいとは一概にいえない。南方でよく食べられる白いソーセージや、豚の血と麦を詰めたカシャンカといった変わったものもある。ハムに関しては、デンマークやオランダ産といわれている缶詰のほとんどはポーランドからの輸出によるものが多い。
魚料理
バルト海に面してはいても、ポーランド料理として魚料理は貧弱なものだ。一般的には鰊が最も多く食べられるが、ほとんどは酢漬けかオイル漬け。ちなみに鰊の日本風といわれる料理が存在するが、これはオイル漬けの鰊にタマネギ、ゆで卵を細かくしたものをマヨネーズであえたもので、特に日本とは関係がない。それと同時に魚のギリシャ風といった料理もあり、これはトマトピューレにタマネギ、にんじんなどの野菜を煮込んだものに白身魚をソティしたものを加えたもので、かなり一般的に食べられる。鰊ではマスタード漬けにしたものが意外とおいしい。その他よく食べられるのが鯉で、クリスマスにはミンチにした団子風のものが食べられるが、一般的にはソティにしたものや、天麩羅のようにしたものが多い。レストランのメニューでは鱒のソティもある。白身魚として鱈もよく食べられるが、たらこや数の子は市販されていない。鮭や鯖、鰻の薫製も普通の店で買うことができるが、車海老や小海老、烏賊は冷凍物、蟹、鮪などはほとんど缶詰になっている。貝類も購入は可能だが、瓶詰め、冷凍がほとんどで、種類は限られている。最近はヴェジタリアンブームもあり、魚介類も結構食べられるようにはなったが、まだまだ一般的にはなっていないのが実状だ。
調味料
一般的にスラブ料理の特徴として酸味があげられる。これはポーランド料理も同じで、ガイドブックにもでてくる酢キャベツとソーセージを煮込んだビゴスやジューレック、又は白バルシチ(ボルシチ)というスープも酸味があるし、真っ赤なビートスープも仕上げに果汁エッセンス等を入れる。
スープ類は最後の仕上げとしてよくサワークリームをいれるが、これも熱いスープにヨーグルトのようなものをいれるわけだから、基本的には酸味で調味しているわけだ。また、気候がら保存食が発達していることもあり、発酵キャベツや発酵きゅうりも好まれる(一般的に言われている酢漬けキャベツや酢漬けきゅうりとは違って発酵させたもの)。
ポーランド料理と一概にいっても、ドイツ料理やロシア料理の影響もかなりあり、ポーランド料理のみを列記するのはちょっとたいへんだ。ただしポーランドにいる間にこれだけは食べて見るべきものは多数ある。例えば白チーズ。普通の店で売っているが、脂肪分が多く弾力のあるものや、脂肪分が少ないchudyと呼ばれるものもある。
基本的にはポーランド料理は家庭料理だから、各家庭によって味も作り方もまちまちだ。そのため仮に初めてポーランド料理を口にして、美味しくなかったからといって悲観することはない。特にレストラン等では、こういった家庭料理的なものはあまりメニューにはないし、味も比較的特徴のないものが多い。だから本当のポーランド料理を試そうと思ったら、ポーランド人家庭に招待されることがベストだ。

「ポーランド料理目次」に戻る。